食いしばり用マウスピースは保険で作れる?費用・効果を歯科医師が解説

朝起きたときに顎がだるい、歯がしみる、詰め物がよく取れる。こうした症状の裏に、寝ている間や日中の「食いしばり」が隠れていることがあります。

食いしばりは自覚しにくく、気づいたときには歯がすり減っていたり、欠けていたりすることも少なくありません。その対策としてよく使われるのが、歯科医院で作るマウスピース(ナイトガード)です。

「マウスピースって保険で作れるの?」「市販品ではだめ?」「何回通えばいい?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、食いしばり用マウスピースの効果と限界、保険適用の条件と費用の目安、市販品との違い、作製の流れまで分かりやすく解説します。

目次

食いしばり・歯ぎしりで起こるトラブル

食いしばりや歯ぎしりでは、通常の生活では加わらないような強い力が、無意識のうちに歯や顎へ繰り返しかかることがあります。その負担は、歯だけでなく顎や筋肉にも及びます。

食いしばりと歯ぎしりの違い

  • 食いしばり(クレンチング):上下の歯をぐっと噛みしめる。音が出ないため気づきにくい
  • 歯ぎしり(グラインディング):上下の歯をこすり合わせる。ギリギリと音が出ることが多い

どちらも就寝中に起こることが多いですが、食いしばりはパソコン作業や運転中など、日中の集中しているときにも起こります。

歯や顎に起こる主なトラブル

  • 歯のすり減り、ひび、欠け
  • 知覚過敏(冷たいものがしみる)
  • 詰め物・被せ物が取れる、割れる
  • 歯や歯周組織への負担、歯の動揺(歯周病がある場合は特に注意)
  • 顎の痛み、口が開けにくい(顎関節への負担)
  • 顎まわりの筋肉の疲労や頭痛、エラの張り(咬筋の発達)を伴うことがある

特に、根管治療を受けた歯など歯質が大きく失われている歯では、強い力が繰り返しかかることで割れるリスクが高まります。割れ方によっては抜歯が必要になることもあるため、早めの対策が大切です。

セルフチェック

次のうち当てはまるものが多い方は、食いしばりや歯ぎしりをしている可能性があります。

  • 朝起きたとき、顎のだるさやこわばりがある
  • 家族から歯ぎしりの音を指摘されたことがある
  • 歯の先がすり減って平らになっている
  • 頬の内側に白い線(噛み跡)がある
  • 舌のふちに歯の跡がついている
  • 上顎の中央や下の歯の内側に、骨のふくらみ(骨隆起)がある
  • 気づくと上下の歯が触れている

セルフチェックはあくまで目安で、当てはまる項目があっても食いしばり・歯ぎしりがあると断定できるわけではありません。気になる方は、歯科医院で歯のすり減り方や噛み合わせを確認してもらいましょう。

食いしばり用マウスピース(ナイトガード)の効果と限界

食いしばり用のマウスピースは、主に就寝中に装着する樹脂製の装置です。歯科では「ナイトガード」や「スプリント」とも呼ばれます。

期待できる効果

メリット

①歯をすり減りや破折から守る

上下の歯が直接こすれ合うのを抑え、すり減りやひび、欠けのリスク軽減が期待できます。詰め物や被せ物にかかる負担を減らすことにもつながります。

②特定の歯に力が集中するのを抑える

噛み合わせを調整したマウスピースを使うことで、特定の歯に力が集中しにくくなることが期待できます。

③顎や筋肉の負担をやわらげる

顎や咀嚼筋にかかる負担が軽減し、起床時の顎のだるさや痛みが和らぐ場合があります。

知っておきたい限界

ここは誤解の多いポイントですが、マウスピースは食いしばり・歯ぎしりそのものを止める装置ではありません。

就寝中の歯ぎしりは、睡眠の状態やストレスなど複数の要因が関わっていると考えられています。マウスピースは、その力から歯と顎を「守る」ための装置です。

そのため、外すと元の状態に戻ります。症状がある間は継続して使用することが基本です。また、効果の感じ方には個人差があります。

歯科医院で作るマウスピースと市販品の違い

ドラッグストアや通販でも、歯ぎしり用のマウスピースは購入できます。ただし、歯科医院で作るものとは適合の精度や噛み合わせの確認の有無が大きく異なります。

比較項目市販品歯科医院で作るもの
作り方既製品、またはお湯で軟らかくして自分で噛んで成形歯型を採って一人ひとりに合わせて作製
適合ずれやすく、外れることがある歯列に合わせて作るため安定しやすい
噛み合わせの確認なし歯科医師が確認・調整する
お口のチェックなし虫歯・歯周病・顎の状態を事前に確認
保険適用なし(全額自己負担)条件を満たせば保険適用

合わないマウスピースを使い続けるリスク

適合の悪いマウスピースは、特定の歯にだけ強い力がかかったり、噛み合わせに負担がかかったりして、違和感や痛みにつながることがあります。

また、厚みや形が合っていないと違和感が強く、結局使わなくなってしまうケースも少なくありません。症状がある方は、まず歯科医院で原因を確認したうえで作製することをおすすめします。

スポーツ用・矯正用・いびき用とは別物です

歯科で扱うマウスピースには、目的の違う複数の種類があります。

種類目的
食いしばり・歯ぎしり用(ナイトガード)就寝中などの強い力から歯と顎を守る
スポーツ用(マウスガード)競技中の衝撃から歯や口を守る
マウスピース矯正の装置歯を動かす
いびき・睡眠時無呼吸症候群用下顎を前に出して気道を確保する

目的が違えば、厚み・素材・形も変わります。手持ちのマウスピースで代用するのは避けましょう。スポーツ用については「スポーツマウスピース(マウスガード)完全ガイド」で詳しく解説しています。

食いしばり用マウスピースは保険で作れる?費用の目安

治療上必要と判断されれば保険適用になります

歯ぎしり・食いしばりなどに対するマウスピース(口腔内装置)は、歯科医師が診察し、治療上必要と判断した場合に保険適用で作製できます。装置の種類やお口の状態によって、保険診療上の取り扱いは異なります。

健康保険は「病気やケガの治療」に対して使える制度です。歯ぎしりに対する口腔内装置は、歯科の保険診療の項目として定められています。

一方で、次のようなケースは保険適用外(自費)になるのが一般的です。

  • 診察を受けずに、マウスピースだけを作りたい場合
  • 保険では使えない素材や構造を希望する場合
  • スポーツ用マウスガードなど、競技中のケガの予防を目的とした場合

費用の目安

種類費用の目安
保険適用(3割負担)3,000〜7,000円程度
自費のマウスピース10,000〜50,000円程度
市販品1,000〜5,000円程度

保険適用の場合の金額は、診察・検査・型取り・装着を含めた合計の目安です。保険の装置は作製方法によって3種類に分かれており、どの装置を使うか、初診か再診か、必要な検査の内容によって自己負担額が変わります。

自費のマウスピースは、硬い素材と軟らかい素材を組み合わせた2層構造のものや、薄く違和感の少ないものなど、素材や設計を選べるのが特徴です。

※上記は一般的な目安です。実際の費用は、お口の状態や装置の種類によって異なります。

作製前に治療が必要な場合も

虫歯や歯周病、合っていない詰め物がある場合は、先に治療を行うことがあります。マウスピースは今の歯の形に合わせて作るため、後から歯の形が変わると合わなくなってしまうためです。

歯科医院での作り方と通院回数

食いしばり用のマウスピースは、多くの場合、型取りと完成・装着の2回程度の通院で完成します。

①診察・お口のチェック・型取り

まず、顎のだるさや歯のしみなどの症状、いつ食いしばっていそうかをお伺いします。続いて、歯のすり減り方、噛み合わせ、顎の動き、虫歯や歯周病の有無を確認します。

治療が必要な歯がある場合は、先に治療を行ってから型取りをすることがあります。問題がなければ歯型を採ります。診察から型取りまでの時間は、30分前後が目安です。

型取りのデジタル化については「口腔内スキャナーは保険適用?」で解説しています。

②完成・装着・調整

完成したマウスピースを実際に装着し、きつさや痛み、外れやすさ、噛み合わせを確認します。必要に応じて、縁の形や噛み合わせの当たりを調整します。所要時間は20〜30分程度が一般的です。

あわせて、装着の方法やお手入れについてもご説明します。

完成までの期間

型取りから完成までは、一般的に1〜2週間程度です。

使い始めて違和感や痛みがある場合は、我慢せずにご相談ください。使い始めの時期に再調整を行うことで、より快適に使えるようになります。

通院回数や完成時期は、お口の状態や作製方法によって異なります。

使い方・お手入れ・交換時期

使い方のポイント

  • 寝る前に歯みがきをしてから装着する
  • 装着当初は違和感を感じることがある
  • 痛みや強いきつさがある場合は、自分で削ったりせず歯科医院で調整する
  • 日中の食いしばりが強い方は、歯科医師の指示に沿って日中も使用することがある

お手入れ方法

使用後は水で洗う

朝外したら流水で洗い、必要に応じてやわらかいブラシで汚れを落とします。マウスピースの素材は熱に弱く、熱湯につけると変形することがあるので、ぬるま湯か水で洗うようにしましょう。ただし、素材によってお手入れ方法が異なる場合があるため、作製時の説明に従ってください。唾液や汚れが残ったままだと、においや細菌の繁殖の原因になります。

研磨剤は使わない

研磨剤入りの歯みがき粉は表面に細かい傷をつけ、汚れが付きやすくなるため避けましょう。汚れや匂いが気になる場合は、マウスピース専用の洗浄剤を使うのがおすすめです。

乾かしてケースで保管する

洗った後はよく乾かし、専用ケースに入れて保管します。直射日光が当たる場所や高温になる場所は、変形の原因になるため避けてください。ティッシュに包んで置いておくと、ゴミと間違えて捨ててしまう可能性があるので、必ずケースに入れるよう心がけましょう。

交換・作り直しの目安

  • 穴が開いた、ひびが入った、割れた
  • 装着するとゆるい、またはきつい
  • 変色やにおいが取れない

こうしたサインがあれば、作り直しの時期です。使用頻度や食いしばりの強さによって寿命は大きく変わります。定期検診の際にマウスピースを持参していただければ、すり減り具合や適合を確認できます。

マウスピースとあわせて行いたい対策

日中の「歯の接触」に気づく

リラックスしているとき、上下の歯は本来わずかに離れています。上下の歯が軽く触れ続ける癖は「TCH(歯列接触癖)」と呼ばれ、顎や咀嚼筋への負担に関連する可能性があります。

パソコンやスマートフォンの画面の端に付箋を貼り、目に入ったら歯が触れていないか確認する方法がよく知られています。気づいたら、唇は閉じたまま、上下の歯を離して顔の力を抜きましょう。

睡眠や日中の過ごし方を整える

睡眠の質やストレス、カフェインや飲酒などが歯ぎしりに関連する場合もあるため、次のような点を意識するのも一つの方法です。

  • 寝る前のスマートフォンやカフェイン、飲酒を控える
  • 首や肩、顎まわりをゆっくりほぐす
  • 長時間同じ姿勢で作業を続けない

ただし、生活習慣の改善だけで歯ぎしりが止まるとは限りません。

ボツリヌス治療という選択肢

噛む筋肉(咬筋)の緊張が強い場合には、ボツリヌストキシンを咬筋に注入し、筋肉の働きを一時的に弱める治療が検討されることがあります。食いしばり・歯ぎしりに伴う咀嚼筋の活動や症状の軽減が報告されていますが、効果には個人差があり、すべての方に適しているわけではありません。

また、日本では食いしばり・歯ぎしりに対するボツリヌス治療は保険適用外の自費診療です。当院でもボツリヌス治療を行っています。マウスピースとの併用を含め、適応については診察のうえご提案します。

顎の痛みが強い場合は早めに受診を

口が開けにくい、顎がカクカク鳴って痛む、といった症状がある場合は、顎関節症が進んでいる可能性があります。症状が強いときは、マウスピースを作る前にまず診察を受けましょう。

よくある質問

FAQ section in Japanese よくある質問 with three tooth-shaped icons labeled Q, &, A on a gray background

マウスピースを着けると、食いしばりは治りますか?

マウスピースは食いしばりそのものを止める装置ではなく、強い力から歯と顎を守るための装置です。日中の癖への対策や生活習慣の見直しとあわせて行うことで、症状の軽減が期待できます。

市販品と歯科医院のもの、どちらがいいですか?

症状がある場合は、歯科医院で作ることをおすすめします。噛み合わせや歯の状態を確認したうえで作製・調整できるため、合わないマウスピースによるトラブルを避けやすくなります。条件を満たせば保険も使えます。

寝ている間に外れてしまいます。

適合がゆるくなっている、または調整が必要な可能性があります。そのまま使わず、作製した歯科医院にご相談ください。

着けると歯が痛い、きつい感じがします。

使い始めは多少の締め付け感がありますが、痛みが続く場合は調整が必要です。ご自身で削ると適合が悪くなるため、歯科医院で調整を受けてください。

歯の治療中でも作れますか?

作れますが、治療で歯の形が変わるとマウスピースが合わなくなるため、治療が終わってから作製するのが一般的です。治療の進み具合をみて、作製のタイミングをご提案します。

マウスピースの費用は医療費控除の対象になりますか?

治療を目的として作製したマウスピースは、医療費控除の対象になる可能性があります。個別の判断は、お住まいの地域の税務署または税理士にご確認ください。

まとめ|食いしばりが気になる方は早めのご相談を

食いしばりや歯ぎしりは自覚しにくく、気づいたときには歯のすり減りや欠け、詰め物の脱離などが起きていることがあります。

食いしばり用のマウスピースは、強い力から歯と顎を守るための装置です。歯科医師が治療上必要と判断した場合は、保険適用で作製できます。

市販品も手軽に購入できますが、適合や噛み合わせの確認ができない点には注意が必要です。症状がある方は、まず歯科医院で原因を確認したうえで作製することをおすすめします。

三鷹のレミントン歯科では、お口の状態や症状に合わせた食いしばり用マウスピースを作製しています。

  • 歯のすり減りや噛み合わせ、顎の状態を確認したうえで作製します
  • 保険適用のマウスピースに対応しています
  • 装着後の調整や、定期検診でのマウスピースのチェックも行います
  • 咬筋が発達している方には、ボツリヌス治療(自費診療)のご相談も承ります

「朝、顎がだるい」「歯がしみる」「詰め物がよく取れる」といった症状がある方は、お気軽にご相談ください。

※効果の感じ方には個人差があります。

三鷹駅周辺で歯の症状にお困りの方へ。
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