歯の詰め物や被せ物を作る際に行う「型取り」が苦手という方は、少なくありません。粘土のような材料を口の中に入れると吐き気がする、材料が固まるまで待つのがつらいなど、型取りに不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
2026年度の診療報酬改定では、口腔内スキャナーを使用した「光学印象」の保険対象が拡大されました。
これまで対象だったCAD/CAMインレーに加え、CAD/CAM冠を製作する場合も、所定の条件を満たせば保険診療で光学印象を行えるようになっています。厚生労働省の資料では、光学印象の評価も100点から150点へ引き上げられました。
この記事では、口腔内スキャナーによるデジタル型取りの仕組みや、どのような治療が保険の対象になるのか、従来の型取りとの違いについて分かりやすく解説します。
2026年6月からデジタル型取りの保険対象が広がりました
2026年度の診療報酬改定により、歯科診療におけるデジタル技術の活用範囲が広がりました。その一つが、口腔内スキャナーを使用して歯型をデータ化する「光学印象」の対象拡大です。これまで保険診療における光学印象は、CAD/CAMインレーを製作する場合が対象でした。
2026年6月からはCAD/CAM冠も対象に追加され、CAD/CAM冠またはCAD/CAMインレーを製作する際に、デジタル印象採得装置を使って歯型と噛み合わせを記録した場合、光学印象を算定できるようになりました。
ただし、口腔内スキャナーを使ったすべての型取りが保険対象になったわけではありません。治療する歯や製作する詰め物・被せ物の種類、症例、歯科医院の施設基準などによって取り扱いが異なります。
光学印象とは

光学印象(こうがくいんしょう)とは、口腔内スキャナーと呼ばれる小型のカメラで歯や歯ぐきの形を読み取り、デジタルデータとして記録する型取り方法です。
スキャナーを口の中で少しずつ動かしながら読み取り、取得した情報をコンピューター上で立体的なデータに変換します。従来の型取りでは、粘土状の印象材を専用のトレーに盛り、口の中に入れて固まるまで待つ方法が一般的です。
一方、光学印象では粘土状の印象材を使わず、小型のカメラで歯の形を読み取ります。簡単にいうと、口腔内スキャナーを使ったデジタル方式の歯型取りです。
CAD/CAM冠も対象に追加
CAD/CAM冠とは、コンピューターを使用して設計・製作する白い被せ物です。CAD/CAMインレーが歯の一部を補う詰め物であるのに対し、CAD/CAM冠は歯全体を覆う被せ物です。
2026年度の診療報酬改定では、これまで光学印象の対象だったCAD/CAMインレーに加えて、CAD/CAM冠も対象になりました。
さらに、CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーを大臼歯に使用する際に設けられていた「咬合支持要件」も撤廃され、適応症例が拡大しています。これまで噛み合わせの条件によってCAD/CAM治療の対象にならなかった患者さんでも、保険診療で白い詰め物・被せ物を選択できる可能性が広がったということです。
ただし、すべての歯に無条件で使用できるわけではありません。歯の状態や噛み合わせ、噛む力、歯ぎしりの有無などを確認したうえで、歯科医師が適応を判断します。
保険診療で使用できる白い詰め物・被せ物については、「銀歯を白くしたい方へ|保険でできるCAD/CAM冠・インレー」でも詳しく解説しています。
口腔内スキャナーによる光学印象の対象一覧
2026年度改定における主な取り扱いを整理すると、次のようになります。
| 治療内容 | 口腔内スキャナーによる光学印象 |
|---|---|
| 保険診療のCAD/CAM冠 | 対象 |
| 保険診療のCAD/CAMインレー | 対象 |
| 一般的な金属冠 | 対象外 |
| 入れ歯 | 今回の光学印象の対象拡大とは別 |
| CAD/CAMブリッジ | 今回の光学印象の対象外 |
| 自費診療のセラミック治療 | 保険ではなく自費診療として実施 |
今回の光学印象の対象として厚生労働省が明記しているのは、CAD/CAM冠とCAD/CAMインレーです。
なお、CAD/CAMブリッジ自体は2026年6月から一定の条件で保険診療の対象になっています。対象となるのは、第二小臼歯または第一大臼歯の1歯中間欠損部に対するポンティックを含む3歯ブリッジです。ただし、CAD/CAMブリッジは今回拡大された「光学印象」の対象には含まれておらず、作業模型を用いて製作する方法が規定されています。
また、入れ歯についてもデジタル技術が無関係というわけではありません。2026年度改定では、3Dプリンターを使用して製作する「3次元プリント有床義歯」が新たに評価されています。ただし、これらはCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーに対する光学印象とは別の制度です。
口腔内スキャナーは保険適用になる?

ここで注意したいのが、「口腔内スキャナーそのものが保険適用になった」というわけではないことです。
正確には、口腔内スキャナーを使って行う「光学印象」という処置が、CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーを製作する場合に、所定の条件を満たせば保険診療で算定できるという仕組みです。
そのため、「口腔内スキャナーがある歯科医院なら、どんな治療でも保険でデジタル型取りができる」というわけではありません。
保険対象になるケース
2026年度の改定では、主に次のような条件を満たした場合に、光学印象を保険診療で行うことができます。
- 保険診療のCAD/CAM冠を製作する場合
- 保険診療のCAD/CAMインレーを製作する場合
- デジタル印象採得装置を使って歯型と噛み合わせを記録する場合
- 歯科医院が必要な施設基準を満たし、届出を行っている場合
- その他の算定要件を満たしている場合
CAD/CAM冠やCAD/CAMインレーについても、すべての症例に無条件で使用できるわけではありません。治療する歯の状態や残っている歯の量、噛み合わせなどを確認したうえで、歯科医師が適応を判断します。
自費診療になるケース
口腔内スキャナーは、保険診療だけで使用する機器ではありません。自費診療のセラミック治療やマウスピース矯正などでも使用されることがあります。例えば、自費診療のセラミッククラウンを製作する際に口腔内スキャナーで型取りをした場合は、治療全体が自費診療となります。
また、保険診療であっても、今回の光学印象の算定対象に含まれない治療では、保険の光学印象として扱われません。
患者さんの希望だけで決まるわけではない
「型取りが苦手だから、必ず口腔内スキャナーを使ってほしい」と希望しても、すべてのケースで使用できるとは限りません。口腔内スキャナーを使用できるかどうかは、次のような条件によって判断されます。
- 製作する詰め物・被せ物の種類
- 治療する歯の位置や状態
- 歯ぐきの状態
- 唾液や出血の状態
- 歯科医院の設備や診療体制
- 施設基準の届出状況
- 保険診療上の算定要件
症例によっては、従来の印象材による型取りのほうが適している場合もあります。「以前の型取りで吐き気がした」など、不安がある場合は治療前に歯科医師やスタッフへ相談しておきましょう。
口腔内スキャナーのメリット|従来の歯型取りとの違い

口腔内スキャナーの大きな特徴は、粘土状の印象材を使わずに歯の形を記録できることです。特に、従来の型取りに強い不快感がある方にとっては、治療時の負担を軽減できる場合があります。
粘土状の印象材を使わず、嘔吐反射が強い方にも配慮しやすい

従来の型取りでは、印象材を盛ったトレーを口の中に入れ、材料が固まるまで一定時間待ちます。印象材の味やにおい、口いっぱいに材料が広がる感覚が苦手な方や、上あごや舌の奥に触れることで強い吐き気を感じる「嘔吐反射」がある方にとっては、負担になることがあります。
口腔内スキャナーでは、小型カメラを使って歯の形を読み取るため、粘土状の印象材を口の中に入れる必要がありません。スキャナー自体は口の中に入れますが、印象材を入れたまま固まるまで待つ方法とは異なり、途中でスキャンを止めたり、休憩を挟んだりすることもできます。
そのため、従来の型取りが苦手な方や、嘔吐反射が強い方にも配慮しながら進めやすいことが、口腔内スキャナーの大きなメリットです。
読み取り状態をその場で確認できる
口腔内スキャナーで取得した歯型は、すぐに画面上に表示されます。そのため、歯の形が十分に読み取れているかを、その場で確認できます。
また、印象材を使用しないため、従来の型取りで生じることがある印象材の変形や、材料に空気が入り込むことによる気泡の影響を受けません。
一方で、唾液や出血などによって歯の形を読み取りにくくなる場合はあります。
必要な部分だけ追加でスキャンできる
歯の一部が十分に読み取れていない場合には、不足している部分を追加でスキャンできます。従来の型取りでは、大きな不備があると、印象材を使ってもう一度型取りを行わなければならないことがあります。
口腔内スキャナーでは、画面上で不足している箇所を確認しながら、必要な部分だけを追加で読み取ることができます。
CAD/CAM治療と相性がよい
CAD/CAM治療では、コンピューター上で詰め物や被せ物を設計し、そのデータをもとに材料を加工して製作します。
口腔内スキャナーで取得する歯型もデジタルデータであるため、その後の設計・製作工程へデータを活用しやすいことが特徴です。
2026年度の診療報酬改定でCAD/CAM冠が光学印象の対象に追加されたことも、歯科治療のデジタル化を進める見直しの一つです。
口腔内スキャナーにも注意点があります

口腔内スキャナーには多くのメリットがありますが、どのような治療にも使用できるわけではありません。
デジタル型取りと従来の型取りには、それぞれ適した症例があります。
すべての治療に使えるわけではない
2026年度の改定で保険診療における光学印象の対象となったのは、CAD/CAM冠とCAD/CAMインレーです。金属製の被せ物やCAD/CAMブリッジ、入れ歯などに、同じ光学印象の取り扱いが適用されるわけではありません。
また、口腔内スキャナーを導入している歯科医院でも、すべての治療でスキャナーを使用するわけではありません。
症例によっては従来の型取りを選択する
歯を削った部分が歯ぐきの深い位置にある場合など、口腔内スキャナーで必要な形を読み取りにくいケースがあります。そのような場合には、従来の印象材による型取りを選択することがあります。
どちらの方法が適しているかは、治療する部位やお口の状態などを確認して歯科医師が判断します。
歯ぐきの出血や唾液の影響を受けることがある
口腔内スキャナーは、歯の表面を光学的に読み取る機器です。そのため、読み取りたい部分が唾液や血液で覆われていると、必要な形を記録しにくくなることがあります。
特に、歯と歯ぐきの境目から出血している場合などは、スキャンの前に歯ぐきの状態を整えることが必要になる場合があります。
よくある質問

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口腔内スキャナーは保険適用ですか?
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口腔内スキャナーそのものが一律に保険適用になるわけではありません。2026年6月から、保険診療のCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーを製作する際の「光学印象」が、所定の条件を満たす場合に保険診療で算定できます。
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口腔内スキャナーなら、粘土のような材料を使った型取りは不要ですか?
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口腔内スキャナーによるデジタル型取りが適している場合は、粘土状の印象材を使わずに歯型を記録できます。ただし、治療内容やお口の状態によっては、従来の印象材を使った型取りが必要になる場合もあります。
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嘔吐反射が強くても口腔内スキャナーは使えますか?
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口腔内スキャナーでも小型カメラを口の中に入れる必要はありますが、印象材を入れたまま固まるまで待つ必要はありません。途中でスキャンを止めたり、休憩を挟んだりできるため、従来の型取りが苦手な方や嘔吐反射が強い方にも配慮しながら進めやすい方法です。
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口腔内スキャナーがあれば、どんな詰め物や被せ物でも保険で型取りできますか?
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いいえ。2026年度改定で光学印象の対象となったのは、CAD/CAM冠とCAD/CAMインレーです。一般的な金属冠やCAD/CAMブリッジなどは、今回拡大された光学印象の対象には含まれていません。
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希望すれば必ず口腔内スキャナーで型取りできますか?
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必ず使用できるわけではありません。治療する歯の位置や歯ぐきの状態、唾液・出血の状態、製作する詰め物や被せ物の種類などを確認し、歯科医師が適した型取り方法を判断します。
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レミントン歯科では保険診療でデジタル型取りができますか?
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レミントン歯科では口腔内スキャナー「プライムスキャン」を導入し、光学印象に関する施設基準も届け出ています。保険診療のCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーについては、症例や算定要件を満たす場合にデジタル型取りを行うことができます。型取りが苦手な方もお気軽にご相談ください。
まとめ
2026年度の診療報酬改定により、口腔内スキャナーを使用した光学印象の保険対象が広がりました。
これまで対象だったCAD/CAMインレーに加えて、2026年6月からはCAD/CAM冠も対象となっています。さらに、大臼歯のCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーに設けられていた咬合支持要件も撤廃され、適応症例が拡大しました。
口腔内スキャナーでは、粘土状の印象材を使わず、小型のカメラで歯の形を読み取ります。そのため、従来の型取りで吐き気が出やすい方や、印象材を口の中に入れることに不安がある方にとって、負担を軽減できる場合があります。
これまで「型取りが苦手だから」と詰め物や被せ物の治療をためらっていた方も、症例によっては、粘土状の印象材を使わずにデジタル型取りで治療を進めることができます。
口腔内スキャナーによる光学印象を保険診療で行えるかどうかは、治療する歯や製作する詰め物・被せ物の種類、お口の状態、保険診療上の算定要件などによって異なります。気になる方は歯科医院にご相談ください。
※本記事の診療報酬に関する内容は2026年8月時点の情報です。制度や算定要件は今後変更される場合があります。
レミントン歯科ではプライムスキャンを導入しています
三鷹駅北口から徒歩4分のレミントン歯科では、口腔内スキャナー「プライムスキャン」を導入し、光学印象に関する施設基準も届け出ています。
保険診療のCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーでは、症例や算定要件に応じて、粘土状の印象材を使わずにデジタル型取りを行うことができます。
「型取りで吐きそうになる」「印象材が苦手」という方も、まずはご相談ください。お口の状態を確認し、負担に配慮した型取り方法をご案内します。


